【年月よりも濃く】※結構嘘かも。

 彼女はとてもアンバランスだ。
 クリムソンはそんな風に思う。
 ナイヴスが連れ込んだハンターは女性だった。ナイヴスが連れて来た時点で、仲間か、女性かのどちらかだろうことは予想出来た。――それがナイヴスだ。
 意外だったのはハンターだったこと、そしてナイヴスが女性と気付かず戦っていたことだ。
 ――まぁ、確かに、CAがネロじゃねぇ……。
 ネロの特性は熟知していたから、ナイヴスが見破れなかったことも理解出来る。
 その、気付いた瞬間のナイヴスを想像すると笑いがこみ上げてくる。そして、懐かしさに目を細める。
 瀕死の自分を捨て、彼女を選んだCAをクリムソンは恨んではいない。しかし納得は出来ない。
 ――彼女には、私よりも秘めた力があるのだろうか……?
 CAはそういう風に人間を選んでいく。だから彼女を救ったのは、情で動いたのではなく、ネロなりになにかその力を感じることがあったからだろう。
 ――どうだろうなぁ、よくわからない。
 いったんはCAがなかったクリムソンだが、運び込まれたこの場所に住むようになり、この診療所の主から診療所と一緒にCAを受け継いだ。ハンターをしていたクリムソンはそのCAに驚愕したのだった。
 あれから日々はゆったりと過ぎ、そしてクリムソンは彼女に出会い、ネロに再会した。もうネロには遭遇することはないと思っていたので、受け継いだCAを知った時くらい驚いた。
 ――あの時の子供が、大きくなった……。
 ゼクスから話は聞いていたので、彼女がハンターになっているのは知っていたし、手配書にネロの名があったので、クリムソンが知るのは時間の問題だった。しかしめぐりめぐって、このファームに彼女が姿を現すことなんて、まったく想像していなかった。

 彼女は、きれいだった。
 おそらく女性と思わずに戦っていたナイヴスも、女性だと気付いてその姿を改めて見た時はさぞや驚いたに違いない。そしてあわててここまで連れてきた。その姿をぜひ見たかった。
 かつてネロがクリムソンと契約を破棄した時、彼は瀕死だったため、彼女の存在があったことしか覚えていない。ゼクスの話は聞いていたが、姿を見たいと思ったこともなかった。
 そして、まったく女性らしくなかった。
 顔も身体つきも声も、ネロを着ていなければ立派な女性なのに、言葉遣いはまるで男性だった。
 ゼクスがそういう育て方をしているはずもない、と考えて、彼はまったく手をつけていなかったことを思い出す。
 ――確か、子守りを誰かに投げたんだっけ……?
クリムソンもそうであったように、ちょうどゼクスも転機が訪れていた。その頃の互いは後で話に聞いたくらいだ。それを聞けばとてもではないが彼女の子守りは出来なかっただろう。
しかし彼女の足りないところは、なんというか、たまらない気持ちになる。噛んで含めるように云うのが、さながら幼子に物を教えているような気になってくる。けれどもその姿は立派な女性なのだから、そのギャップになんともいえない気持ちになる。
ノワールは従順だった。
云われたことを、淡々としたまなざしで受け止め、受け入れる。
――うーん、出来れば私が育てたかったなぁ……。
状況を考えれば相当無理だったと思う。それに自分の生きた道に後悔はない。
はぁ、とため息をつく。
ネロというCAで結ばれた類まれなる絆なのに、あまり活かせていないような気がする。ノワールはともかく、自分は確実に。
「調子、悪いの?」
 不意にかけられた声に、クリムソンは驚いた。ばっと、身体ごと立ち上がり、声の主を見る。途中で気付いた。先ほどまで、クリムソンの思考を占めていた人物だ。
「ノワール、……また、気配を消していたのかい?」
 ごまかすように云うのに、ノワールは素直に首を横に振った。
「消しては、いない」
「そうか。――じゃあ、私がぼんやりし過ぎていたんだね」
 ふう、とため息の脚色まで加えると、ノワールの瞳が揺れる。
「なにか、心配事?」
「いいや。君のね、保護者になりたかったなぁ、って思っていたんだ」
 ノワールのまっすぐな瞳に、なんとなくごまかせずに正直に云った。
 するとノワールは少し驚いたような瞳をして、それから首を横に振った。
「それは、困る。」
 そう云われるとは思わなかったから、クリムソンが驚いた。何故かあわててノワールの方に身を乗り出して云う。
「どうして? 確かに私は料理や家事全般が駄目な自覚はあるけど、保護者としてはいろいろ教えられると思うけど」
「そういうことじゃなくて―――」
 ノワールはなにか言葉を探しているみたいに、視線をさまよわせた。クリムソンは内心はハラハラしながらノワールが言葉を継ぐのを待った。
 やがて意を決したように、ノワールがこちらを見た。
「あの、保護者、には、こういう気持ちにならないと思う。だからクリムソンとは今のままがいい」
「〜〜〜〜っ!」
 抽象的な言葉だったし、今の自分たちの関係も曖昧だが、そのノワールなりの云いたいことをクリムソンは彼なりに解釈して、そして言葉を失った。
 ――一応、そういう対象だと、見てくれるんだ………。
 そういう回路が、育て親のせいで壊滅的なノワールなりに、クリムソンを特別だと思ってくれるのがうれしかった。
「うーん、じゃあ、保護者じゃなくて、違う関係で、これからのノワールを躾けていけばいいんだね」
 ――まあもう、そういう必要はないけど。
 他の男に手を出されるのも困るので、少しずつ関係と一緒に進めていけばいい。
 その言葉をすべて理解したとは思えないが、ノワールはうれしそうに微笑んだのだった。           
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迷走した話ですが、まあなんとか。やっぱこの人は変態よね、とか。