【Love Vitamin2・サークルカット小話】
 手を伸ばして、触れられる――それが彼女のリアル。

「加賀美先生、職員室ですか? 一緒に戻っていいですか」
 授業が終わり、教室を出たところで、真奈美とばったり出くわした。加賀美を見てうれしそうな表情で、そう云って寄ってくる。悪い気はしないが、やはり慣れない。
「う………仕方ねえ」
 まっすぐな真奈美の目線を避け、云うと「ありがとうございます!」とうれしそうに、加賀美と並んで歩き出した。
 会話もないうのに、楽しそうに自分と並んで歩く真奈美を、ちらり、と横目で見て、そして驚く。
 ――ち、ちっちぇー。
 目線を下げないと真奈美が見えない。そして真奈美に顔を向けないように見ても、見えるのは彼女の頭だ。少し癖のある髪が加賀美の目線の下で舞う。なんとなく見てはいけないような気がして、加賀美はあわてて目をそらす。けれども、また視線を戻す。
「そういえば――」
 真奈美が云い出したのに、加賀美はあわてて真奈美から顔をそらす。その様子に気付かない真奈美は言葉を継いだ。
「天童先生からお聞きしたんですけど、加賀美先生はゲームに詳しいんですね。今度私にも出来るゲーム、教えてください」
「げっ!」
 ――なんてこと云うんだ、天童サン!
 くちびるを噛む加賀美に、ある意味さらなる追い打ちを無邪気に加賀美を見て、真奈美は継いだ。
「出来れば、加賀美先生と二人で出来るのがいいです」
 天童を恨めばいいのか、感謝すればいいのか、加賀美にはもうわからなかった。

end 1012頃? 110215up

カット用につき、短いので、文字は大きめ。全体的にこの大きさの方がいいのかな。いや改行まめにした方が読みやすい気も。
別ジャンルで申し込んでたんですが、お客さんが来てくれてうれしかったです。