【eyes to me】

「瑞希くんは話さないから、目が離せないわね」
 悠里の言葉に、瑞希は彼女を見上げた。
 すっかり定位置になった悠里の膝の上で、瑞希は眠気と闘っていた。
(せっかく、悠里さんの膝の上……)
 だけどももともと眠る性質な上に、枕とも違う柔らかい感触と、優しく頭を撫でられるのに、瑞希は早くも意識が朦朧としている。何度も味わっているのに、やっぱりすぐに眠りに落ちてしまう。
 瑞希の視線に気づいて、悠里が頬を赤らめる。
「あ、ごめんなさい。思ったこと、また口に出てた? いいのよ、寝ていて」
「……ん。でも、気になる……」
 悠里の言葉の意味を考えると、瑞希は不安だ。出来るだけ彼女を不快にさせたくないから、聞いておきたい。
「え、とね。前よりは話してくれるようになってくれたけど、話してくれてない時、なんとなく不安でつい、瑞希くんを見ちゃうの。でも、瑞希くんはたいてい寝てるか、……私を見ているのよね」
「……ん、見てる」
 瑞希の言葉に、悠里はまたも真っ赤になる。今度は動揺しているのだろう、髪を撫でていた手が、瑞希の髪を指ですくってくるくる回し始める。そういうのも好きなので、瑞希は放っておく。
「でも瑞希くんから目が離せないのは、瑞希くんが話さないからじゃなくて、私が瑞希くんを見ていたいからだと思うの……って、また私、口に出してた?」
 はっとしたような表情をする悠里に、瑞希は手を伸ばして、彼女の頬に触れる。
「……うれしい……僕も、悠里さんを見ていたい……」
 瑞希の言葉に、悠里は顔を赤らめながらもすごくうれしそうに微笑んだ。それを見て、瑞希も幸せな気持ちになる。
(……こういう時間、ずっと……過ごせたら、いい……)
 けれどその時間を共有するために、もう少し話すようにしなければいけないとも感じる。悠里は気にしなくてもいいというけれど、彼女の声も聞きたいけれど、それが彼女を不安にさせるなら話は別だ。
(目が覚めたら……直すから、悠里さん、待ってて……) 
 すごく満たされた気持ちで、瑞希は意識を手放した。
 end 0910頃?

盛大に短いです。ビタミンのSNSにいた頃に、そこに投稿したものです。苦し紛れに(苦笑)。これはもうすごく時間がかかっていなくて、蛍的に書きやすい長さでした。タイトルは思いつきですが、同タイトルの曲は大好きです。